屋久島 くろしお彩時記

PHOTO & ESSEY
争い

「勝ち組」と「負け組」、その明暗。

屋久島・ケラマハナダイの喧嘩

ケラマハナダイの喧嘩 / 一湊 -12m

「魚の喧嘩」というとどんなものを想像するだろうか?
手もなく足もないわけだから、口を使った噛みつきあいを想像する方が多いかもしれない。
しかし、実際は水中で噛みつき合いの喧嘩を見かけることは非常に稀だ。
通常、「魚の喧嘩」といったら最も多いパターンは、自らの体の大きさを相手に誇示して見せる体側誇示が最も多い。
だから、大抵はものの数秒で勝敗は決定する。
より体の大きな者が勝者だからだ。
つまり魚は普段、無駄な体力は使わないし、同じ種類同士で無益な争いはしないものなのだ。
人間よりも賢いのだ。
。。。と、言いたいところだが、たまにどう考えても意味のない、無駄な体力をつかっているとしか思えない喧嘩を見かけることがある。
例えばキンギョハナダイやケラマハナダイの一次オス同士の「噛みつき合い」がそれだ。
その群れで一人前のオスとしてメスとペア産卵を行う二次オスとは違い、一次オスは産卵行動には積極的に関与することなく、おこぼれをもらおうとしたり、間男を演じたりと卑屈な態度で産卵に参加する弱いオスたちだ。
つまり「負け組」。。。
その「負け組」同士が喧嘩したところで、その群れ(社会)には何の影響もない気がするのだが、この噛みつき合いは執拗に長い時間続く。
群れから少し離れた場所で、2匹は何度も何度もひたすら噛みつき合っては、その場でグルグル周っている。
噛みつき合っている最中は必死で周りは見えていないようで、カメラを向けるとレンズにぶつかってくるくらいだ。
いったい、彼らは何が原因で喧嘩になったのだろうか?
ふと群れの方に目をやると「勝ち組」の二次オスたちが、今日も元気にメスたちに声をかけていた。
格差社会がここにも。。。

略奪愛!

屋久島・コブシメの喧嘩

コブシメ オスのケンカ / 一湊 -12m

「略奪愛」は不倫の恋なので、常に後ろめたさが拭えない。
世間も認めないだろうし、周りの人間も一言「止めとけ」と言うだろう。
日本には古来より忍ぶ恋というものがあるが、「略奪愛」はまさに忍ぶ恋。
他人には言えない愛のカタチなのだ。
だから、通常は相手の男がいる目の前でその女性に愛を語ったり、あからさまに横取りしようとしたりすることはない。
少なくとも僕にはそんな勇気はないし、度胸もないので、例え奪うにしてもその男にはバレないように上手くやろうと考えるだろう。
GWが明け、5月中旬ぐらいになるとコブシメの産卵が最盛期に入る。
この頃になると産卵場所のウスサザナミサンゴ上では、人目もはばからず、あちらこちらで「略奪愛」を成し遂げようと、白昼堂々とオス同士が喧嘩を行っているのが見られる。
しかも、メスは旦那の子を宿し、その卵を産んでいる真っ最中にも関わらず、もう1匹のオスは横から堂々と求愛し、奪おうと試みる。
当然、旦那は怒って、そいつの排除に懸命なのだが、これに一生懸命になってしまうと、今度はまた別のオスが嫁さんにちょっかいを出してくるから気が抜けない。
互いの嫁さんが卵を産んでいるのを見守っていたオス同士がただ接近しちゃっただけで、喧嘩が始まる始末なのだ。
だから産卵中はかなりピリピリした状態が続く。
コブシメの「略奪愛」は忍ぶ恋などという静かなものではない。
それはもう戦争なのだ。