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Cover Photo Archive
ヤクシマDNA
- 2010年1月10日 11:21
- Cover Photo | 歳時記
海にダイバーの姿が少なくなってきた11-12月、上流にいた屋久島のアユたちが一斉に中流域まで下りてきて産卵が始まる。
屋久島より南にある奄美大島以南にはリュウキュウアユ(P. altivelis ryukyuensis)という亜種がいるのだが、屋久島のアユは内地の川で見られるアユ(P. altivelis altivelis)と同じ種類だとされている。
アユの南限はこの屋久島となるのだ。
リュウキュウアユは絶滅危惧種に指定され、その保護が叫ばれているのに対し、屋久島のアユは本土と同じ種類だという事もあってか、その重要性が話題になる事もなければ、特に保護策がとられる事もない。
しかし屋久島のアユは内地のアユには見られない遺伝子をかなりの頻度で保有していて、遺伝的分化が見られる事はずいぶん前から知られている。
そして面白いことに屋久島のアユは川ごとに微妙に遺伝子に差異があることも解ってきている。
アユは孵化後一度海にでるのだが、沖合に出ることはなく、しばらくはその河口周辺に留まり、春には同じ川を遡上する。
また生まれた川に戻るわけだ。
そして血はどんどん濃くなっていく。。。
つまり、屋久島島内のアユは遺伝的多様性が低い。
遺伝的多様性が低いと、ちょっとした事が原因で絶滅する可能性を秘めている。
島内でもっと屋久島のアユが遺伝的に特異な地域集団であることを認識し、保全上の「価値」について議論が必要だ。
屋久島のアユもリュウキュウアユ同様に積極的な保護策が必要だと思う。
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天から舞い落ちる
- 2009年11月 3日 10:55
- Cover Photo | 歳時記
11月にもなると黒潮は屋久島から完全に離れ始め、水中の透明度も夏に比べて落ち始める。
綺麗な薄いブルーだった海の色も濃いブルーに変わり、水中は何となく暗い感じの日が多くなってくる。
真っ白い砂地の中層で数千匹の群がりをつくるムレハタタテダイは、そんな暗い海を華やかに演出してくれる魚のひとつだ。
ダイバーが近づいていくと中層で群れていたムレハタタテダイたちは、一斉に白い砂地に点在する岩や構造物に向かって流れるように斜めに舞い降りていく。
みな同じ方向を向き、綺麗に舞い降りていくと暗い海は一気に派手になり、南国っぽい海に早替わりする。
冬が近づく海であることを忘れさせてくれる瞬間だ。
ところがたまにこうした岩や構造物から、かなり離れたところで群れていることがある。
こうした群れに近づくと斜めに舞い降りるのではなく、水底に向かって真っ逆さまに落ちていくのだが、こうなるとムードはまたガラリと変わる。
ムレハタタテダイたちが一斉に天から降る雪のように舞い落ちる光景は幻想的で、美しい。
こんなときは、むしろ多少暗い海の方が雰囲気があって良かったりするのだ。
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無効分散する魚たち
- 2009年7月11日 03:19
- Cover Photo | 歳時記
伊豆や紀伊半島など温帯域の海は秋が面白いと聞いている。
それは黒潮に乗ってカラフルな南の魚たちがいろいろと流れてくるからだそうだ。
その多くは幼魚でしばらくはそこで育つが、冬になり水温が下がると死んでしまう。
これを昔は「死滅回遊」と言っていたのだが、実際は回遊して本来の分布域へ戻るわけではなく、言葉として適切ではないということで、現在は「無効分散」とよばれている。
これらの魚たちは単純に沖縄から流れてくると思いがちだが、黒潮は台湾と与那国島の間から沖縄本島や奄美大島などを避けるように東シナ海を北上し、屋久島近海で太平洋側に流れ込むので、四国や本州の太平洋側の各温帯域に無効分散する魚たちのメイン供給地は屋久島近海だと考えるのが自然だ。
クマノミやツユベラ、カンムリベラやミナミハコフグなどダイバーの間で人気のある魚たちの多くは、屋久島産まれかもしれない。
そんな無効分散する魚たちの供給元である屋久島だが、当然、屋久島にもさらにもっと南から流れてきて成魚になることなく死んでしまう魚たちがいる。
つまり、ここ屋久島にも無効分散する魚たちは存在するのだ。
チョウチョウコショウダイ、アカメハゼ、イロブダイなどがそんな魚たちで、これらは黒潮の発祥元である台湾近海から流されてくる連中だと考えられる。
こうした魚たちは屋久島では四国や本州の太平洋側の各温帯域よりも一足早く、初夏から真夏にかけて流れてくる。
黒潮が完全に接岸する7月上旬がその時期だ。
つまり屋久島の海は秋よりも夏が面白いのだ。
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初夏の兆し
- 2009年6月10日 23:59
- Cover Photo | 歳時記
冬から春にかけて何となく寂しく地味に感じる水底が、6月ごろから急に華やいでくる。
これは4-5月に繁殖行動を始めた各種スズメダイたちの幼魚が一斉に見られ始めるからだ。
ヒレナガスズメダイ、イチモンスズメダイ、ルリホシスズメダイ、クロメガネスズメダイなどの幼魚が溶け始めた海藻の陰から、チョロチョロと顔を出す。
6月の屋久島の海は黒潮の完全接岸を目の前にして、黒潮が寄ったり離れたりを繰り返すため、透明度の良い日と悪い日の差が激しい。
透明度が落ちる時は浮遊物の多い黒潮の縁が屋久島に接しているときで、海中は浮遊物が多く、溶け始めた海藻が汚らしく舞うため、視界の悪い日が結構あったりする。
そんなときは、否応なしに僕の目は水底付近にいる小物を探し始める事になる。
解けたり、千切れたりしてユラユラ揺れている海藻の陰からチラチラ見える綺麗なスズメダイの幼魚たちを見つけると、まるで宝物でも見つけたかのような高揚感が湧き上がり、過去に何回もカメラを向けたスズメダイでも、嬉しくてついつい何枚もシャッターを切ってしまう。
「海の中の宝石探し」というと、様々な色彩やデザインが見られ、その美しさからウミウシがダイバーの間では有名だが、スズメダイの幼魚もなかなかのものだ。
成魚になると地味になってしまう種類も多く、幼魚期の短い期間だけ最高の輝きを放つ。
こうしたスズメダイの美しい幼魚たちが水底を華やかに演出し始めると、夏はもうスグそこまで迫っている。
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大事なものは持って逃げる!
- 2009年5月11日 13:44
- Cover Photo | 歳時記
毎年5月のGW明けぐらいから、冬季の間はほとんど見られなかったジョーフィッシュたちが水底の小穴から一斉に顔を出し始め、それと共に繁殖期に入っていく。
ジョーフィッシュというのは英名で和名はカエルアマダイ。
その名の通り穴からカエルのような顔をヒョッコリと出し、その愛らしい顔や動きはダイバーの人気の的だ。
この魚はメスが産んだ卵をオスが孵化するまでくわえ続けて育てる事がよく知られている。
しかし屋久島では-10mぐらいまでの水深でごくごく普通に見られる「超」がつくほどの普通種にも関わらず、最初のうちはなかなか卵をくわえたオスに出会えずにいた。
これだけ沢山いる魚なのにナゼ卵をくわえた子に出会えないのか不思議だったのだが、その疑問はひょんな事から解決された。
あるとき、いつものようにジョーフィッシュを観察していると、間違って小石を巣穴の中に落としてしまった。
当然のようにジョーフィッシュは顔を引っ込めるわけだが、次に顔を出した瞬間がビックリ!
何と口いっぱいに卵を頬張っているではないか!
どうも普段は卵を穴の中に置いておき、驚いて危険を感じると口に咥えて出てくるみたいだ。
知らなかった生態。。。
これまで卵をくわえたジョーフィッシュを見たことがなかったのはこれで納得したのだった。
自然にできるだけインパクトを与えないダイビングをする事はとても重要なことで否定する気はまったくないが、ただただ影響を与えないように遠くから見守っていたのでは気づけない生態もあり、その生態を知らないばかりに間違った自然保護を施すことだけは絶対に避けねばならない。
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暗い水中に最初の灯をともす妖精。
- 2009年4月 2日 02:01
- Cover Photo | 歳時記
ベラ科に属する魚でイトヒキベラという魚がいる。
この仲間には日本産のものが10種いて、オスの求愛時の体色がとても美しいので一部のダイバーの間では根強い人気がある魚たちだ。
イトヒキベラの仲間は英名では「フェアリーラス(Fairy-wrasse)」と呼ばれている。
「Fairy(=妖精)」を充てたネーミングのセンスは素晴らしい。
確かにイトヒキベラの仲間は暗い水中に輝く妖精のような魚だ。
屋久島ではこのうち、極端に深い水深で見られるヤリイトヒキベラ以外の9種が-30m以浅の水深で見られ、ゴシキイトヒキベラ以外の8種は幼魚から成魚まですべてのステージが生息しており、時期になると活発な求愛や産卵行動が見られる普通種だ。
これらの多くは水温の上昇と共に求愛を始め、繁殖期に突入していくのだが、その先陣を切るのがクレナイイトヒキベラだ。
まだ水温も低い毎年4-5月になると-30m付近の斜面で紅(くれない)色に染まったオスがすべての鰭を広げて、メスの間を縫うようにして滑空し、求愛する姿が見られる。
やや水温の低い時期の方が活発なようで、水温の上がり際と下がった直後の頃、つまり春と秋が最も繁殖が盛んな時期だ。。
どうも、このイトヒキベラは温帯寄りの種類のようで、未だ活発ではない他の亜熱帯系のイトヒキベラたちを尻目に、こいつらだけが元気よく泳ぎ回っている。
実際、屋久島よりも南に下ると、この魚は極端に少なくなる。
クレナイイトヒキベラの存在は、屋久島近海の海が南西諸島の一角を占めるとは言え、まだまだ温帯色が強い事を明示している。
完全に黒潮が接岸していないこの時期の屋久島の-30m付近はまだ暗く寂しい。
そんな水中に最初に灯をともし、派手に演出してくれるのがこのクレナイイトヒキベラという美しい妖精だ。
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ボーンフィッシュ
- 2009年3月 8日 12:55
- Cover Photo | 歳時記
毎年3月になるとソトイワシの群れが一湊のダイビングエリアに入り込み、-15mぐらいの砂地に200匹くらいが溜まって、連日狭いエリアを遊泳しているのが見られる。
いわゆる「春の風物詩」のひとつだ。
このソトイワシ、大西洋、太平洋の赤道付近の亜熱帯域を中心に分布しており、日本でも稀に釣れるようだが、味も不味く、骨が多いため、好んで食べられることもなく、その名前もあまり知られていない。
ところが海外では「ボーンフィッシュ」と呼ばれ、近年愛好者が増えつつある海のフライフィッシングの好ターゲットとして人気があり、フライフィッシャーの間ではとても有名な魚だ。
フロリダやクリスマス島、そしてカリブ海の島々などが釣り場として有名で、特にバハマは聖地とされているようだ。
これらの地域ではボーンフィッシュが生活の中にも息づいていて、バハマの10セント硬貨の中では2匹のボーンフィシュが泳いでいるし、キューバではボーンフィッシュを図案化した切手があったりする。
その生態は今ひとつ掴めないのだが、フライフィッシャーたちは産卵の為に浅場に大挙して押し寄せるボーンフィッシュを狙うらしいので、屋久島でも産卵期は河口付近の浅場などもっと浅いエリアにいるのかもしれない。
日本でもカリブ海の島々のようにフライでボーンフィッシュが狙える!などといって、大挙、日本のバハマ・屋久島に世界中のフライフィッシャーたちが押し寄せてきたら困るので、この話はこの辺で・・・
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愛のダンス!
- 2009年2月 1日 01:17
- Cover Photo | 歳時記
僕は昔からヘビギンポの仲間が好きで、特別な愛情を持って接してきた。
ヘビギンポはスノーケリングでも観察できるような極めて浅い水深で見られるため、タンクの残圧を気にすることなくのんびりとその生態を観察できるのがいい。
ヘビギンポの仲間のオスは繁殖期、いつもと違う派手な体色に変わりメスに求愛する。
これを興奮色(婚姻色)と呼んでいるのだが、その色彩は種類によってそれぞれ異なるため、この興奮色で、ある程度種類が特定できる。
北から南までかなり広い範囲で見られ、日本で最も多く見られるヘビギンポの興奮色は「黒」。
このヘビギンポは温帯域では7月頃、伊豆諸島では4月頃が繁殖期なのだが、屋久島では年が明けて間もなくすると繁殖期に突入する。
繁殖期は各オスが一定の間隔でテリトリーとなる産卵床を持ち、お互いを牽制し合いながらメスが近寄ってくるのを待つ。
たまにオス同士の小競り合いも見られるのだが、これがかなり激しい。
そしてメスが近くに寄ってくると、すべてのオスが一斉に求愛を始める。
その場でピョンピョン飛び跳ねたり、グルグルまわったり。
カエルのように口を大きく開けて、何かを叫んでいるような行動も求愛のひとつだろうか?
いずれにしても興奮している様子は誰が見ても一目瞭然だ。
メスは1ヶ所、気に入ったオスの産卵床に入り込んで、早速産卵を始めるのだが、この時、周りのオスの反応も凄まじいものがある。
フラレてもなお諦めない。
相変わらず、求愛のダンスを踊り、こっちに来るように誘いをかけていた。
メスが丁寧に卵を産み付けている間、オスはその周囲を興奮しながら飛びまわり、たまに精子をかける。
僕はその瞬間を狙ってひたすらシャッターを切り続ける。
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恥じらいを忘れた女性は強い!
- 2009年1月 1日 01:52
- Cover Photo | Cover Photo
屋久島はコブシメ・アイランドだ。
至る所に産卵床となるウスサザナミサンゴの群落があり、繁殖最盛期の5月初旬には数十匹の雌雄が集まり、大産卵ショーが繰り広げられる。
繁殖期は年明けと共に始まり、水温が急激に上昇する初夏までそれは続く。
繁殖が始まったばかりの頃のウスサザナミサンゴの上には雌雄1ペアと取り巻きのオスが4-5匹という少なめの構成。
繁殖最盛期になると産卵中のメスには触れそうなくらい至近距離まで近づいて観察できるのだが、この時期の新妻はもの凄くシャイだ。
写真を撮るためにしばらくサンゴの近くで粘っていると、なかなか産卵に寄って来ない上に、産卵にやって来てもさっさと卵を産み着けると、すぐに恥らいながら(?)逃げてしまう。
それが繁殖最盛期になると堂々としたもので、僕らダイバーをまったく避けることなく、産卵という目的を果たすために真っ直ぐにウスサザナミサンゴに寄ってくる。
産卵中もお客さんと一緒に囲んでそれを観察していても、何も気にする様子も無く、しっかり卵を産み着け、ダイバーの真横をゆっくりすり抜けて去っていく。
つまり産卵が盛んになってくればくるほど、警戒心がどんどん薄れてくるわけなのだが、これははたから見ると娘の頃には持っていた恥じらいの気持ちを忘れ、結婚生活に慣れ切ったおばちゃんのようでなんか面白い。
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